2018年、SNSで”退職代行”がバズっていたのを記憶している方も多いだろう。この記事を読んでいる人の中にも実際にサービス利用した方々がいるかもしれない。退職代行の利用は経営者目線からすると社員が無責任、メンタルが弱いなどのネガティブなイメージを持たれているが、実は企業や社会にとってポジティブな要素が多い。今回は退職代行の社会的意義と今後の展望について、業界のパイオニアとされるEXIT株式会社の代表取締役で、自身も3度の退職経験がある新野俊幸氏に取材した。
PROFILE
新野俊幸
EXIT株式会社
代表取締役
新卒でソフトバンクに入社後、何の成果もあげられないまま1年で退職。暗黒のニート時代を過ごす。紆余曲折を経て、2017年に日本初の「退職代行サービス」を発明。2018年、EXIT株式会社を設立。この世から退職できずに悩む人をなくしたい。
※退職代行とは、何らかの理由で労働者が会社を退職できないときや、退職したいと意思表示できないときに、労働者に代わって退職に関する連絡を仲介するサービスだ。電話やメール、チャットで相談し、料金2万円を振り込むだけで、出社せずに即日退職できる。
ーーEXITの設立経緯について教えてください。
ーー具体的にどのような方々がサービス利用・相談されるのでしょうか。
ーーすぐに辞める方は在職期間が短いという話がありましたが、他にも退職代行を利用する方の共通点はあるのでしょうか。あまり人にものを強く言えない方や、優しい方が多いのかなと推察しました。
ーー実際、なぜ退職代行が流行っているのでしょうか。
ーー新型コロナが流行する前後で、退職代行業界で感じた変化があれば教えてください。
ーー退職代行をする中で気づいたことはありますか。
ーー退職代行の社会的意義は何だと思いますか。
ーー自殺までいかなくても電話ひとつでいつでも辞められるという安心感もありそうですね。
ーー今後の取り組みについて教えてください。
取材を終えての感想は、退職代行の社会的意義こんなにもあるのかという驚きだった。自殺者数減、ブラック企業の淘汰といった個人のメリットがあり、企業側や経営者側にとっては職場環境の良し悪しを量ることができ、さらに退職者の心の叫びを知ることもできる。退職代行は個人と企業の双方の問題を解決することができるものだと理解できた。また取材で新野氏が語っていたように新型コロナの流行によって本気で退職を考える人も出てくるかもしれない。もしも退職したいと言い出せない、世間に対する義理の文化が邪魔している人は、EXITの利用をお勧めしたい。
EXITの退職代行は以下URLを参照ください。
https://www.taishokudaikou.com/
原 健輔
anow編集部
エディター/リサーチャー
新野:退職代行のコンセプトを思いついたきっかけとしては、自分自身が会社を退職した際に辞めづらかった経験から来ています。これまで3回退職を経験しているのですが、ネガティブな退職とポジティブな退職の2種類があると思っていて、前者は、あまり会社で活躍できずに次に行く、みたいなパターン。後者は現在活躍できているけど、別のやりたいことがあるだとか、ステップアップしたいだとか、私は両方のパターンを経験しました。でも結局どちらのパターンにしろ辞めづらくて、これだけ辞めづらいのはおかしいと思いました。自分の人生なのに”退職”というちょっとした意思決定で、なぜこれほど苦しまなければいけないのかと、これは問題だと感じました。退職という行為がもっと気軽になれば良いと思い、「退職代行サービス」を発明しました。
私を例に話すと、2012年に新卒でソフトバンクに入社し、ちょうど1年で辞めることになるのですが、当時「大企業をたったの1年で退職する」ということは常識外れの行為でした。今でこそ「大企業辞めた俺かっこいい!」みたいな価値観も出てきていますが、当時は誰に相談しても、全員が私を止めました。両親にはもったいないと言われ、上司には逃げるなと言われ、約400人の同期で退職した人はほとんどいない、といった状況。自分以外の誰からも退職しない方がいいと言われる中、私はなんとか退職意思を貫くことができました。でもこれだけの人から退職を止められたら、多くの人は退職を諦めるだろうなと思いました。
3社目ではサイバーエージェント系列の会社にいて、そこでは営業として売上を立てることができていて、そこそこ活躍できていたと思います。でもそれはそれで辞めにくくて・・・。職場からは「君に辞められると困る」といった声もあるし、上司との関係も良好だったので裏切る形になってしまうと感じました。ここまで一緒に頑張ってきたのに、ここで辞めるのかと。人情もあるし、いい関係を築けたからこその「辞めづらさ」がありました。結局、どんな場合でも辞めづらいことがわかって「退職したいのに退職ができない」というのは個人にとっても社会にとっても良くない、と思い立ち小学校の同級生と起業しました。
実際にサービスを立ち上げてみるとすごく需要がありました。ありがたいことにSNSでもバズりまして、バズッた当初たくさんのメディアから取材を受けました。色々と話し過ぎた結果、多くの退職代行サービスが乱立し、現在では20~30社ほど退職代行業者がいます。世の中が「退職代行」を求めているのだと確信しました。