2019年に創業された株式会社イノカは、サンゴ礁の生態系を水槽のなかに再現する方法を研究するベンチャー企業だ。同社が開発した「環境移送技術」は、海を切り取り、陸上のラボのなかに生態系ごと「海を見える化」する技術だという。天然海水を用いずに、東京の水道水から生成した人工海水で生み出された「海」は、臨海部にいかずとも様々な海洋研究を可能にする。企業との共同研究や教育事業を通し、イノカが目指すのは、環境保全と経済合理性が両立される世界だ。同社で事業開発を行う竹内四季COOに話を伺った。
PROFILE
竹内 四季
株式会社イノカ
取締役 COO
1994年生まれ。鹿児島出身。ラ・サール中高、東京大学経済学部卒業。学部時代はソーシャルビジネスに関する事例研究を行う。メガベンチャーを経て、2020年2月にイノカにジョインし、ビジネスサイド全般を管掌。「環境保全 × 経済合理性」を掲げ、事業開発を推進中。上場企業へのコンサルティング、ウェビナー実績多数。
ーー創業の経緯を教えてください。
ーー竹内さんは事業開発やビジネス面の業務を担当されていますが、創業後に入社されたのでしょうか。
ーーいまお話を伺っているラボにも大きなサンゴ水槽があります。環境問題の普及や啓蒙を行っていくなかで、サンゴが重要視されるのはなぜでしょうか。
ーーサンゴの産卵実験や成長モニタリングなども行われていますね。
ーー環境移送技術とはどのようなものか教えてください。
ーー4月には資生堂との共同研究に向けた連携協定を結ばれたことを発表されていますが、どういった研究を行っているのでしょうか。
ーー実際の海での研究と比較して、どのようなメリットがあるのでしょうか。
ーー研究と並行して「サンゴ礁ラボ」などの教育事業にも力を入れてらっしゃいます。
ーー御社の活動のなかで難しく感じている部分や、ミッションとしてお考えになっていることがあればお聞かせください。
ーー「環境保全×経済合理性を両立」関わる部分かと思います。
毒性評価中の複数の水槽
ーー企業による環境保護への意識という点では、日本は欧米よりも疎い印象があります。
ーー御社の事業やお話しから、みなさんが海やアクアリウムがお好きで事業が行われていることが伝わってきます。
ーー御社の今後の展望をお聞かせください。
記事協力(杉本 航平)
原 健輔
anow編集部
エディター/リサーチャー
竹内:創業者の高倉(葉太)は東京大学でAI研究を行い、趣味としていたアクアリウムとテクノロジーをかけあわせた取り組みを模索していました。そのなかで、共同創業者の増田(直記)と出会ったことをきっかけにイノカが立ち上げられました。増田はもともと地元・栃木の工場で働きながら自宅で巨大なサンゴ水槽を作っていた稀有な人物で、いまはCAO(チーフ・アクアリウム・オフィサー)という役職に就いています。
サンゴは非常に繊細で、水族館や研究機関でも飼育するのが難しい生き物です。増田のもつ職人技術と、高倉のもつAI/IoT技術ををかけあわせることで、任意の場所に海洋環境を再現する技術に昇華できるのではないかという発想で生まれたのが「環境移送技術」です。