【前編】ブロックチェーンで実現するクリエイターの新しい応援方法

株式会社フィナンシェ 取締役COO 田中 隆一 氏

原田 真希 anow編集部 エディター/リサーチャー


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現在インターネット上では双方向コミュニケーションを主流とするWeb2.0から、分散型の新しい経済圏を構築する「Web3.0」への大転換が起こっている。Web3.0による新たなパラダイムは、より自由で多様性に富んだ社会をつくる可能性を秘めているという。

この大きな転換期を先導する株式会社フィナンシェは、ブロックチェーン技術を活用したトークン発行型のクラウドファンディングコミュニティサービス「FiNANCiE」を運営し、クリエイターエコノミーの変革をめざすWeb3.0企業だ。『ブロックチェーンの技術によるインセンティブ革命』に焦点を当て、クリエイターの新しい応援方法を生み出している。

代表取締役CEOの​國光宏尚氏を中心に、​取締役COOの田中隆一氏、取締役CSOの前田英樹氏、​取締役CTOの西出飛鳥氏という4人のボードメンバーにより立ち上がったフィナンシェは、彼ら自身が新たな社会を生み出すSocial Quantumでありながら、クリエイターを中心とするSocial Quantumを支援する企業であると言えるだろう。

そこで今回、前編では、フィナンシェの中核事業であるブロックチェーン技術を活用したトークン発行型のクラウドファンディングサービス「FiNANCiE」がどのような価値を創出しているのか、後編では、次なる一手としてのNFT事業、またフィナンシェが「Empowering the next billion dreams(10億人の挑戦を応援するクリエイターエコノミーの実現)」というビジョンに対し、テクノロジーを用いてどのような未来を創造していくのかについて、​取締役COOの田中隆一氏にインタビューした。

特集0:SOCIAL QUANTUMS make another now to happen. 社会の小さな担い手が、新たな『当たり前』を創り出す

今回の特集では、anowと同じく社会を担うために奮闘する“個”を支援する人や組織、コミュニティ、また彼らの存在の意義や定義を考える研究者へのインタビューを通じて、SOCIAL QUANTUMSのあり方や、彼らが活躍していくための条件・要素を深掘り、anowが描く”個と社会の理想的な姿”の糸口を探る。

PROFILE

田中 隆一 株式会社フィナンシェ 取締役COO

外資系コンサルティング会社を経て、2002年DeNA新規事業の立ち上げを経験する。2005年ノッキングオンを共同創業。ゼンリンデータコム社へバイアウト後、2010年ソーシャルゲーム最大手Zynga所属。2012年シンガポールを拠点としたUniconにてブロックチェーン技術を研究。2019年株式会社フィナンシェを共同創業。

ドリーム・シェアリング・サービス「FiNANCiE」

フィナンシェの中核事業である「FiNANCiE」は、ブロックチェーンを活用したトークン発行型のクラウドファンディングサービスである。スマートフォンのアプリ上でトークンを発行して、応援してくれる人、携わってくれる人に配布する。トークンを所有する人は、コミュニティに意見することが可能で、コミュニティが成長すると新たに参加する支援者が増え、トークンの価値自体が高くなることで、インセンティブを受け取ることができる仕組みとなっている。

ドリーム・シェアリング・サービス「FiNANCiE」(出典:フィナンシェ

田中:FiNANCiEでは、夢や目標を目指すスポーツチームやクリエイターを「オーナー」、オーナーを支援するファンを「サポーター」と呼んでいます。オーナーは、トークン(FT&NFT)を発行・販売することで資金を獲得しつつコミュニティを形成することができます。サポーターはトークンを購入することで、ファン/フォロワーという立場を超え、コミュニティを形成するパートナーとして、オーナーと一緒に夢の実現に向けて知恵を絞るなど、共に行動することが可能です。

FiNANCiEで実現するファンのパートナー化(出典:フィナンシェ

次世代型のクラウドファンディング

FiNANCiEは、「トークン発行型」のクラウドファンディングサービスだ。従来のクラウドファンディングは、MakuakeやCAMPFIREに代表される、支援の対価がモノやサービスなどの返礼品で帰ってくる「購入型」、プロが厳選したベンチャー企業に投資できるイークラウドなどの株式発行、売買による「投資型」、日本だとまだ少ないが海外では一般的な見返りのない「寄付型」、資産運用をしたい個人の資金を集めて、ファンドを通じて資金調達したい企業へ貸付ける「融資型」の4つに分類される。

日本で最もポピュラーな「購入型」クラウドファンディングとFiNANCiEが実現した「トークン発行型」クラウドファンディングの大きな違いは、支援をする側と受ける側の関係性が、一過性のものか否かである。

田中:購入型クラウドファンディングは、返礼品を受け取って終わりです。FiNANCiEでは、トークンが運用されることで、継続的な経済活動やトークンを利用したコミュニティ活動の場となる「トークンエコノミー」が成立、一過性ではない継続的な関係を構築することができます。

FiNANCiEを例えるならば、株式会社に投資するエンジェル投資家がその会社のバリューアップを図り、株式の価値を上げることで利益を上げるのと似た仕組みです。ただ会社と株式というかたちだと、どうしても価値を計る手段が売上や利益といったお金だけに絞られてしまう。FiNANCiEは、お金という側面ではなく、如何にファンを増やすか、如何に良い作品を生み出し続けるかが重要になってくるクリエイターを応援する仕組みとして、トークンを用いた新しいクラウドファンディングモデルを当てはめることで、有名になる前から応援してくれる人へのインセンティブを生み出し、クリエイターにファンが付きやすいようなクリエイターエコノミーを実現しました。

FiNANCiEのメリット

  • トークンに価値が生まれ「トークンエコノミー」が成立し、コミュニティでの共創活動ができる
  • トークンエコノミーにより、オーナーだけでなくサポーターにもインセンティブがある
  • オーナーはトークンにより継続的な資金調達ができ、活動をレベルアップできる

トークンの購入はプロジェクトにもよるが、多くは5,000から。クラウドファンディング期間が終わった後には、二次流通マーケットが発生し、、トークンを保有するサポーターがトークンを売買することもできる。二次流通マーケットにおけるトークンの売買は、100円から可能。また、オーナーは継続的にトークンを追加発行(追加ファンディング)することができる。トークン保有者限定の特典やイベントを提供するオーナーも多い。

またオーナーとサポーターは、FiNANCiE上のコミュニティ機能を使い、投票形式の意見交換やチャット形式でのメッセージのやり取りなど、密にコミュニケーションを取ることができる。

田中:二次流通マーケットにおけるトークンの売買及びそれに関連するトークンの価値の上下は、オーナー側にとっても、サポーター側にとっても、継続的なコミュニティ運営と積極的な参加を促し、コミュニティ自体の価値を上げることに注力する理由になっています。

多数のオーナーやサポーターが参加

現在、FiNANCiEでは180以上のプロジェクトが進行、そのうちの半数がスポーツチームによるものとなっている。FiNANCiEのビジネスモデルは、オーナーから固定費をもらうのものではなく、レベニューシェアモデルとなっている。プロジェクトには必ずFiNANCiE側からコミュニティマネージャーが付き、運営の継続、トークンエコノミーの創出、活性化をサポートする。

多数のオーナーが参加(出典:フィナンシェ

田中:ビジョンが明確なコミュニティは、共感者を集めやすく、コミュニティが活発になる傾向にあります。トークンエコノミーとして成立している、つまりトークンを持っていることでコミュニティに貢献、参加できていると実感しやすいプロジェクトは、成功している印象があります。例えば、オーナーがグッズを作る際に、トークンエコノミーでどのグッズを販売してほしいか投票機能を用いてサポーターの意見を集めたり、トークン保有者限定のイベントを定期的に開催していたり。トークンの売買でもサポーターは金銭的なインセンティブを受け取ることができますが、それよりも継続的にコミュニティに関われることを価値とみなす人が多いようです。最初の段階で、プロジェクトの熱心なサポーターになってくれる人を巻き込んでいくことが重要です。FiNANCiEのコミュニティマネージャーは、これらの観点でオーナーを支援していきます。

2021年1月には、「湘南ベルマーレ」が国内スポーツチームとして初めて、FiNANCiEにてクラウドファンディングを始動、反響を集めたこともあり、FiNANCiE全体のトークンホルダー(サポーター)は、もうすぐ10万人に到達する勢いだ。また、FiNANCiEには、1つのプロジェクトだけを支援するのではなく、複数のプロジェクトのトークンを購入するユーザーが多いという。

FiNANCiEは、「Empowering the next billion dreams(10億人の挑戦を応援するクリエイターエコノミーの実現)」というビジョンに対し、プロジェクトの純粋なファンがより近い距離でそのプロジェクトを応援するためにトークンを購入、トークンエコノミーが盛り上がるとトークン自体の価値が上がったり、、コミュニティが大きくなりファンではない多くの人の目にそのプロジェクトを届けることができるようになったりする、というクリエイターにとってもファンにとっても好循環が生まれるフォーマットの創出を実現した。「Web3.0」への転換期とされる現代社会において、この新しいフォーマットを多くのクリエイター、サポーターが受け入れ、使いこなしていくことが期待される。

原田 真希 anow編集部 エディター/リサーチャー

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